苦痛脱却帳

苦痛や不幸から抜け出す方法を書いていきます

17:ファストフード店の仕事は難しい*

コンビニやファストフード店は気軽に始められる初心者向けのアルバイト・・・というのは大間違いだ。

コンビニはレジ接客だけでなく、棚への商品の補充・陳列、不足した商品を発注、掃除、各種機械のメンテナンス、ホットスナック(チキン・フランク等)の調理もする。各種支払い(光熱費など)に対応し、荷物の受理をし、コンビニ受け取りの荷物を渡し、たばこの銘柄も覚えなければいけない。

コピー機操作・ATM操作・チケット購入法の質問もされるし、コピー機に用紙の補充、食料品は賞味期限が切れてないかのチェックもする必要がある。支払い方法も、現金・交通系IC、~pay、クレジットカードなど多岐にわたる。ポイントカードもあるし、割引商品もたくさんあるので商品に貼られた割引シールを見落とさないように会計をする。弁当は温めるかどうかを聞き、スプーンや箸を忘れずつけなければならない。弁当以外にも商品を見てその場で付属品の判断を短時間で間違いなく行う必要がある(例えばヨーグルト・プリン・ゼリーにはスプーンをつけるなど)。

商品2種購入で1つグッズを渡すといったキャンペーンも開催されるし、700円以上購入した人にくじを引いてもらうキャンペーンも実施される。各キャンペーンを忘れず実施する必要がある。
コンビニはこれ以上ないくらいに山ほど仕事の種類と量がある。それらを全て覚え高速で処理しないといけない。この仕事さえテキパキとできれば、世の中の専門知識を必要としない一般的な仕事は、ほぼ全てうまくこなせるんじゃないかとすら思う。

 

ファストフード店の難しさ

ファストフード店は自分は短期間だがアルバイトをした経験がある(2015.7~12)。本格的に仕事をしたのはこれが初めてといえるかもしれない(アルバイトだが)。前の仕事は大したこともしてないのに1か月半程度で記憶喪失状態になってしまったからだ(2週間で記憶は回復したのでよかったが…)。ハンバーガーショップで、12時から24時までのうちの6時間程度働いた。以下に難しかった点を挙げる。

 

レジ操作

レジのモニター操作(タッチパネル)がまず難しい。期間限定メニューも多く、新商品や期間限定メニューのボタンは、画面の空いている隙間に追加され続けるので、レジのボタンが整列されていない。大抵は自動でセットになるのに、自動でセットにならない商品が一部あり、その時はわざわざセットのボタンを探さなければならない。表示が正式名称ではない場合もあるし、惑わすためにあるかのようなボタンがいくつもある。

ポイントカードへの入金操作や出金操作(=支払い操作)、貯まったポイントでの支払い、紙の割引チケットの使用、携帯・スマホのクーポン割引、株主優待券の使用、コーヒーチケット購入・使用と言った特別な割引や支払い操作があるし、電話・ネット注文も対応する。

チケットや優待券の中にはハンコを押さなければならないものがあったり、レシートを再印字してチケットの裏に貼ってレジ内に保管したり、事務所に用意してある専用ノートに貼って保管したり、レジが済んだ後も付随した仕事が発生する。付随する業務は客が途切れたわずかな時間で行わなければならない。

 

レジ裏方作業

レジを自身で行った時にドリンク・スープ・シェイク・デザートの注文が入ると、自分で裏方に回り製造することになる(ハンバーガーだけ頼むという客は少ないので大抵入る)。迅速に製造してすぐに次の客の対応しなければならない。この連続。観光地の繁華街ど真ん中の店だったので、平日でも昼間12:00~13:30くらいは、客が途切れることなく接客が続く。

ドリンクはS/M/Lサイズがあり、店内ならグラス・持ち帰りなら紙コップ。しかしLだけグラスがないので店内飲食でもLなら強制紙コップ。紙コップのMLは大きいふただがSは小さいふたを使用。店内で出すホットティーとホットコーヒーは器が違うし、スプーンとソーサー(皿)も用意しなければいけない。ホットコーヒーはそのまま出すがホットティーは専用のふたを付けないといけない。そして持ち帰る場合はスプーンではなくプラスチックのマドラーをつけ、持ち帰り用紙コップのホットティーからはティーバッグを忘れず(90秒後に)取らなければならい。コーヒーはミルク・ガムシロップをつけるかそれぞれ聞き、ティーはレモンとミルクどちらをつけるかとガムシロップをつけるか聞かないといけない。そしてホットならガムシロップでなく砂糖をつける。アイスコーヒーやアイスティー(紅茶)はLサイズならばミルク・レモン・ガムシロップは2つつける。

ここまで覚えてようやくアイスティーアイスコーヒーホットティーホットコーヒーの4種の注文に対応できる。新人のうちは付き添いがいると教えられたが、2日目ですぐに1人で対応することになった。飲食店はそのくらい新人に時間を使う余裕などない。

スープは、ホットティーやホットコーヒーとはソーサー(皿)が違う、持ち帰り用のスープのふたはホットティーやホットコーヒーのふたとは違う。デザートというのはたまにそのままフォークを添えるだけで出せるものもあるが、パフェのような商品が多く、数種類の層に渡り積み重ねる煩雑な作業が必要だった(5層つくって上に2種類トッピングとか)。ミキサーを使用することもあるので時間がかかる。それぞれの層ごとに容量が決まっている。まずは量を覚えるが、覚えた後は目で見て感覚でできるようにまでになる必要がある。いちいち量る余裕は全くない。食材が無駄になるので練習は1回のみで、あとはぶっつけ本番。他の飲食店でも働いたことはあるが、その店舗も量は量っておらず、皆勘でやっていた。でないと仕事が回らない。

ただしドリンクサーバーから出る飲み物やシェイクサーバーから出るシェイクはそのまま出せるので簡単。

ハンバーガー・各ドリンク・サイドメニューの省略名称を覚える必要がある。スタッフ同士でやりとりするため。これは4日(4時間勤務×4日=16時間)程度でほぼ完全に覚えなければならない(早ければ早い方がいいが)。

 

閉店作業

自分は閉店時間まで勤務することもあったため、閉店作業も覚えることになった。終わっていない仕事は全て閉店作業のメンバーにかかる上に、時間がかかると叱責されるので損な立場だ。

・シェイクシロップ補充(冷蔵庫にシェイクのもとになる液体が入っている)
・ドリンクサーバーへのドリンクの補充(冷蔵庫にドリンクの液体が入っている)
・各洗剤液・消毒液補充(原液を水で15倍に薄めるとか5倍に薄めるとか)
・現金チェック(売り上げと残金があっているかをチェック)合う日がない。ほぼ必ず数十円程度誤差が出ていた。
・清掃(机・いす・床・トイレ・手洗い場)と使用したタオルの高温除菌、補充、ゴミ捨て。
・機械清掃(シェイクマシンの洗浄。シェイクと管を切り離し、シェイクの代わりに毎回消毒液を管に通して洗って除菌までしなければならない。これがかなり時間がかかる。このためシェイクは閉店一時間前には食べれなくなる。)

 

・自分はここで勤務をするまで、寝転がるか座るかの生活を送っていたので、立って仕事をすること自体がきつかった。6時間立ち続けると、足がパンパンになり、激痛を感じた。自分で揉みほぐしたりもしたが、マッサージ店に何度も通うことになった。3か月くらい経ってようやく足が慣れてきた。

・店内客への商品を運ぶ。(商品が出来上がるまで時間がかかるので番号札を渡す。完成したら番号札のある客のテーブルまで届ける。店は2階まであって何度も上下往復するのは大変な重労働だった。)

開封した食品は~時間以内までしか使えないという期限もあるので、期限切れがないか注意しなければいけない。

・なお、自分の勤務した店では電話・ネット注文が入り、宅配業務も承っていた。

 

◆短期記憶

飲食店のような忙しい職場は、短期のインプットとアウトプットの繰り返しだ。学校のテスト勉強のように時間をかけて記憶を積み上げる長期のインプットが得意な人だとしても、短期のインプットが苦手な人も居る。学校のテストはしばらく考える時間があるが、忙しい職場ではアウトプットのための時間も十分に用意されていない。短期記憶と長期記憶は全くわけが違うので、学生時代に勉強が得意でも、短期記憶が苦手で苦しむ人も多い。(もちろん短期記憶も長期記憶も両方の苦手な人も居るだろう。)

自分はこの仕事に就いて初めて短期記憶能力の圧倒的な低さに気づかされた。店にはレジが3つあった。基本は自分がレジを引き受けた客の商品(ドリンク・スープ・シェイク・デザート)は、自分で用意する前提ではあるが、自分のレジ前に客が居なければ、他の人の商品製造を代わってあげることもできる。例えばレジAから「ホットコーヒーとコーラS(店内飲食)」、直後にレジBから「アイスティーM持ち帰り」の用意の代行を頼まれたとする。そのとき「ホットコーヒーとコーラS」を用意している時に次の商品が何だったか(アイスティーM)を忘れてしまう。アイスティーMを覚えていたのはいいもの持ち帰りでなく店内用のものを用意してしまったり。これは通常の人にも起こりえるミスではあるが、自分の場合はそれが多すぎた。2商品+1商品の注文すら覚えられないのだ。焦るなとよく言われたが焦っているわけではない。普通に脳に記憶ができていない。注文を口ずさんだり、メモしたりしてなんとか乗り切った(大抵乗り切れていなかったけど)。

 

それと多数の情報を自分の頭の中に棚を作って整理してから頭に入れていくというのが苦手だったと思う。教科書は1章・2章・3章というように、まとまりとなって書かれている(ほとんどの本もそうだが)。仕事に始めるにあたって研修でもしない限り、On the Job Trainingで教わる(実際に仕事をしながら覚える)ことになる。飲食店でもコンビニでも研修を実施してくれるところは皆無と言っていい。On the Job Trainingで(実際に仕事をしながら)覚えるというのは、大抵の場合教科書の1章から順番通りに・・・というように教わることはない。重要度順ですらなく、教える側の気分でだったり、たまたま来た客が注文したものから学ぶだったりだ。一問一答形式のように、質問・答えのセットで覚えていくことになる。よって知識が入っても全くごちゃごちゃの状態で脳内に留まっている状態なので、引き出すのは極めて困難だ。だから自分の中にある情報を、わざわざ脳内に棚を作ってジャンル分けしておかないとアウトプットが厳しい。(最初から棚が脳内に用意されていて、聞いた瞬間自動で振り分けできる人も居るらしい。)関連する情報は近くにまとめておいておかないとごちゃごちゃになる。これに気づくまで1~2か月かかった。ずっと一問一答形式で知識を入れていたのは失敗だった。

 

自分は家に帰ってから職場でメモした手帳を見て、新しいノートや白い紙に書き写したり、ワードやエクセルで整理した。これでジャンル分けはできた。

しかし仕事上はなかなかうまくいかなかった。やらないよりはましだったが、あまりにも覚える量が多すぎてアウトプットに時間がかかる。普通の人はこれが出来るのだろうか。ここで、自分は通常の人間よりアウトプットまでが時間がかかると理解した。5秒では遅すぎる、2秒でアウトプットし続けないと(思い出さないと)、ファストフード店では勤まらない。自分の脳は普通の人の3分の2程度しか働いてないのではないかと思わされた。これは脳に何か欠陥があるのではないのか。しかし「覚えが悪い人間だ」とされるだけで病名はつかないだろう。いまだに解決していない自身の問題の一つだ。よって途方もなく覚えが悪くミスの多い人間として働いていた。あまりにも多すぎるミスは、ADHDグレーゾーンであることゆえでもあるのだが、このころにはまだ自分では理解していない。今思い出しても厳しくつらい日々だ。

 

◆仕事を辞めた理由

1仕事の難しさ

覚えることが非常に多く、それらをスムーズに進めることにも手間取った。短期のインプットとアウトプットが難しい。閉店作業でのミスは翌朝まで6時間見つからないので大変なことになる。(電源の落とし忘れなど。)よって慎重を期すため、閉店作業で間違いがないようにメモ帳を見て最終確認していた。するとまだ覚えてないのかと先輩のおばさんの怒りを買い、店長に報告され注意を受ける。メモなどは見ていけない雰囲気だった。仕事の覚えが他のメンバーと比べても非常に悪いと店長に言われ、途中で「研修中」に戻された(4か月目に1か月ほど)。
覚えたことをメモして自宅に帰ってから見返し予習復習をしていたが、慣れてきたと思い予習復習時間を減らすとミスが出る→予習復習の時間を増やす→慣れてきたので予習復習の時間を減らす→ミスが出るの繰り返しがずっと続いてしまった。

 

2接客上のストレス

クレームがストレスだった。シェイクは閉店の1時間前に清掃開始しないと労働時間上間に合わないので早めに締めるが、「なんでないんだよ!」と納得できず大声で威嚇してくる客がきた。(クレームが多すぎてこれしか記憶していない。)

 

3同僚との人間関係面

ミスの多さと、覚えの悪さに他の同僚にも不満が生じて、誰とも仲良くなれず、気づいたら2ヶ月半程で自分以外全員敵のような状態になってしまい、その後は陰口や無視に耐えていた。
自分の味方は一人もいなかった。特に副店長と同時間帯に入ることが多く苦痛だった。副店長はあいまいな指示が多く、聞き返すと怒り、声も小さく聞き取れない。副店長は口の動きを見たり聞きとる努力をしろと言ったが、当然仕事中に常にそちらを見ているわけではないので解決できず。
年中怒っている上に、怒っていない時のもたまにわざと怒った声を出して驚かせ、驚く様子を見て楽しんでいた(これは自分に対して以外もやっていた)。

(この仕事をしている時期は、ストレス?か何かわからないが、非常に耳が聞こえづらかったように思う。補聴器も考えたが、補聴器は高額だし、つけることを許される可能性は低いと思いあきらめた。)


4記憶喪失(決定的な要因)

働き始めて5か月目のある日、副店長と同じシフトの時、その日は特に叱責などはなかったのだが、閉店後の清掃・機械メンテナンス作業中に、突然前の職場で起きたのと同じように、あらゆる記憶にもやがかかったように思い出せなくなった。「たった今起床した」ような感じ、今まで立って寝てたのだろうかと思うような状態(そんなことはないのだが)。急にパっと電気が消えたような感じで、脳から情報が一切なくなる。全ての物がまぶしく光って白く見える。キラキラと新しく新鮮に見える。仕事をしているのはわかるのだが、今より前の記憶が掘り返せない。過去を思い出そうとしても、断片的な記憶を暗闇から探し出すような感じで、全てにもやがかかっているようだ。たった30秒・1分くらい前と記憶が繋がっていない。
しかしこの記憶喪失はわずか1日で記憶が復活した。しかしこれから先も仕事中にストレスによって記憶障害が発生すると感じ、辞めることにした。この後1か月働いたのだが、幸いその間には記憶喪失はなかった。辞める月は4時間×週4が精神的に限界になっていた。

◆どのような仕事がオススメか?

薄利多売の仕事より厚利少売の仕事がいい。飲食店やコンビニは小さな利益だがたくさんの人を接客することで稼ぎを増やしている。それよりは絶対に少ない人と接客し大きな利益を出すような仕事を選んだ方が楽だ。薄利多売の仕事は、たくさんの人を相手にする。その中にクレームをつけてくる人が一定割合でいるので、結果クレームを受けることが多くなり、大きなストレスを溜めることになるからだ。10000円の商品でも100円の商品でもクレームをつける人は居る。

ちなみに働く際は、開店作業・閉店作業にかからない時間帯が良い。開店作業・閉店作業を覚えることは、通常作業に加えて覚えることになるので、覚えることが多くなるからだ。